最近、都内を車で走っていると、電動キックボードを見かける機会が増えました。手軽に乗れて、狭い道でもスイスイ進めるので若者を中心に人気が高まっています。
2023年7月に道路交通法の一部が改正され、電動キックボード(特定小型原動機付自転車)への規制が緩和された事で、一定の要件を満たす電動キックボードは、免許が不要となったことで利用者が一気に増えました。
また、LUUPに代表される様に、電動キックボードをレンタルできる場所も増加しており、より多くの人が気軽に利用できるようになったことで今後は都内だけではなく下町でも見かける機会が増えてくるかもしれません。
そこで、注意したいのが電動キックボードに関連した事故です。
今回は電動キックボードを安心して利用するための備え(保険)についてご説明します。
※電動キックボードなどの電動モビリティは発展が著しいため、法改正や保険約款の変更。または新しい保険商品が今後も出てきます。本記事は2025年1月時点での内容となりますのでご注意ください。
目次
まず、電動キックボードを今から購入する方や、レンタルして楽しむ方にも知ってほしいことは、電動モビリティの分類についてです。
電動モビリティとは、電力で動く車両の事です。その中でも電動キックボードは小型モビリティに分類されます。
2024年11月1日から道路交通法が改正され話題となったモペット(ペダル付き電動バイク)も、小型モビリティの一つです。
では、電動キックボードとモペットの車両区分は一緒なのでしょうか?
これらの車両区分は全て「原動機付自転車(原付)」に分類され、更に原動機付自転車から3つに分類されます。
原動機付自転車 | |||
---|---|---|---|
車両区分 | 特定小型 原動機付自転車 |
特例特定小型 原動機付自転車 |
一般 原動機付自転車 |
最高速度 | 20km/h以下 | 6km/h以下 | 特定小型 原動機付自転車 以外のもの |
定格出力 | 0.6kW以下 | 特定小型 原動機付自転車 と同条件で 最高速度表示灯を 点滅させること |
|
長さ | 1.9m以下 | ||
幅 | 0.6m以下 | ||
条件 | 保安基準あり | ||
種類 | 電動キックボードなど | モペットなど | |
免許 | 不要 | 必要 | |
ヘルメット | 努力義務 | 完全義務化 |
少し複雑ですが「特定」と「特例特定」は同じ電動キックボードでも、最高速度表示灯が切り替え可能であれば、車道等を走る際は「特定」となり、歩道を走る際は「特例特定」の扱いとなります。
国土交通省ページの引用元 ※詳細はこちらを御覧ください。
特定小型原動機付自転車に関する交通ルール等について 警視庁
自動車:特定小型原動機付自転車について – 国土交通省
この様に電動キックボードは原動機付自転車の扱いとなるため、「自賠責保険」の加入が義務付けられております。
自賠責保険とは「自動車損害賠償責任保険」の略称で、すべての自動車に契約することが義務付けられている強制保険です。
自賠責保険に未加入・未更新の状態に乗ると、懲役や罰金の対象となるので注意が必要です。個人でご購入された場合は必ず自賠責保険にご加入ください。(LUUPなどのレンタル形式に関しては、レンタル会社が全車両に対して一括加入しているので、自身で加入する必要はありません)
なお、電動キックボードの自賠責保険は2024年4月から保険料区分が新設されて、一般原動機付自転車の自賠責保険より割安になっております。
また、自賠責保険証明書は運転時に携行することが義務付けられていますが、電動キックボードなど収納スペースが限られる乗り物については、自賠責保険証明書の電子保管を認める制度に改正されています。
自賠責保険の詳細については以下弊社のブログや国土交通省のページをご一読ください。
意外と知らない「自賠責保険」について | 葛飾区亀有の頼れる保険代理店セフティー
電動キックボードの自賠責保険・共済|国土交通省
自賠責保険はあくまで被害者への賠償のための制度ですので、ガードレールにぶつかった場合などの対物の補償や、自分自身の怪我の保障は一切ありません。
また、電動キックボードは自転車よりスピードが出ますが安定性がありません。とても便利で気軽に乗れる反面、事故が発生するリスクも高い乗り物です。
万が一に備えて任意保険に加入しておくのが安心です。以下は自賠責保険と任意保険の違いです。
自賠責保険は、被害者に対して最低限の補償を行う強制保険です。よって、補償される限度額が定められています。詳細は以下のとおりです。
損害の種類 | 支払われる内容 | 限度額(被害者1人につき) |
---|---|---|
傷害 による損害 |
治療関係費、文書料、休業損害、慰謝料 | 120万円 |
後遺障害 による損害 |
障害の程度に応じた逸失利益、慰謝料 | 4,000万円 |
死亡 による損害 |
葬儀費、逸失利益、被害者および遺族の慰謝料 | 3,000万円 |
この様に、自賠責保険では自身の補償がないことや、被害者の補償金額も限度額があるため、任意保険への加入を検討することが重要です。
電動キックボードを購入して任意保険を検討する際に『いま現在加入している保険で補償されるから大丈夫』と考えている場合、その補償が本当に適用されるか確認が必要です。
例えば、火災保険などの特約にある個人賠償責任保険は自転車事故で相手に怪我を負わせてしまった場合適用になりますが、電動キックボードの事故では適用されない商品もあります。
あくまでも電動キックボードは車両なので、原付きや自動車と同じような備えが必要になります。
なお、ネット検索すると『電動キックボード保険』が出てきますが、これは一般自動車保険のことです。分かりやすい表現にするために一般自動車保険を電動キックボード保険としている様です。
よって、同じ内容で弊社でもご案内可能です。但し電動キックボードの普及が進めば自賠責保険と同様に電動キックボード専用の保険商品が販売される可能性はあります。
では、電動キックボードの任意保険を検討する場合の「3つの方法・備え方」を紹介します。
すでに自動車保険に加入している場合は「ファミリーバイク特約」を付帯すれば、電動キックボードでも補償対象になります。
また特約が適用される車両には総排気量が125cc以下のバイクまたは50cc以下の三輪以上の車両という条件がつきますが、条件さえ満たせばすべての車両が対象になります。
自分や家族が所有しているものだけではなく、友人やシェアリングサービスから借りた車両で事故を起こしてしまった場合も補償されます。
なお、万が一事故がありファミリーバイク特約を使っても割引等級に影響しないので安心してご利用できます。
自動車保険に加入していない場合は、バイクの保険に任意で加入する形になります。
電動キックボードのためだけであれば、原付きが対象になるバイク保険を選べば十分カバーできます。
また他車運転特約を付帯すると自身の電動キックボード以外の事故も補償の対象になります。自動付帯のケースが多いですが、もしシェアリングサービスを利用する場合は確認してください。
お相手の補償ではなく、自分自身の怪我や入院・通院費用をカバーするのを検討する際は、自動車保険などとは別で受け取れる生命保険や傷害保険に加入する方法もあります。
電動キックボードで事故を起こして働けなくなった場合、個人事業主の方やフリーランスの方などは、国の補償が利用できません。そのため、就業不能に加入するのも選択肢の一つです。
現在は電動キックボードを自身で購入するよりも、LUUPなどのシェアリングサービスで利用する方が多いと思いますが、電動キックボードをレンタルした際の保険はどの様になっているのでしょうか?
シェアリングサービスの電動キックボードは、自賠責保険はもちろん任意保険も加入していおり、保険料は電動キックボードの利用料に含まれています。
よって、シェアリングサービスの電動キックボードで事故を起こした際は、事業者が加入している自賠責保険や任意保険で補償されます。
LUUPでは、死亡・後遺障害に対しては最高500万円、入院の場合は1日あたり7500円、通院の場合は1日あたり3500円が支払われる補償となっております。また、賠償責任に関する補償もあるため一定の安心感があります。(詳細はLUUP公式ページを参照)
事故の際は、この様なシェアリングサービスの事業者が加入している補償が優先されます。その上で、カバーできない部分は自身で加入している保険を使用する形になります。
もし、電動キックボードで事故が発生した際は、速やかに警察へ届けて(負傷者がいれば119番に通報 )、その後シェアリングサービス事業者に連絡をしましょう。
保険金の支払いについては、保険約款に従って保険会社が判断します。LUPPなどのシェアリングサービスの事業者は保険適用有無を判断しません。よって、事故後は主管保険会社と連絡を取り合う形になります。
どんなに保険で備えていても、故意や重大な過失があれば免責となる(保険が適用されない)可能性があります。
特に電動キックボードはネットでも「搭乗者のマナーが悪い」「違反が多い」などの意見を多く見かけます。
警視庁の調査によると、電動キックボードの道路交通法が改正された2023年7月から約1年間で、電動キックボードの交通違反で謙虚された件数が全国で25,156件になったそうです。
検挙されていないケースを踏まえると、電動キックボードの交通違反は相当数あると想定されます。
飲酒運転、二人乗り、スマホ(携帯)で通話しながらの運転は当然のことながら違反となりますが、意外と思われるのが「スマホ画面を見ながらの運転」です。
シェアリングサービスの電動キックボードではスマホでレンタル手続きをして、電動キックボードにスマホを取り付けるホルダーがあります。
しかし、運転中にスマホ画面を見る(注視)するのは違反の対象となります。この様な状態で事故が発生してしまうと重大な過失となり保険が適用されない可能性もあるので注意が必要です。
電動キックボードをはじめとした電動モビリティは、今後さらに普及していくと思いますが、利用者一人ひとりがマナーと交通ルールを守る事が大切です。
そして、電動キックボードを運転する際は適切な保険に加入し、万が一の事故に備えることで、自身や相手(第三者)も安心できる環境になるように心掛けましょう。