自転車は生活の中でなくてはならない移動手段の1つです。通勤・通学はもちろん、ちょっとしたお買い物などで利用している方が多いのではないでしょうか?
そんな自転車に関する法律(道路交通法)が改正され、2024年(令和6年)11月から罰則の強化または追加される事をご存知でしょうか?
記憶に新しいのは、2023年(令和5年)4月に施行された『ヘルメット着用の全自転車利用者への努力義務化』では、その名の通り「努力義務」のためヘルメットを着用していなくても罰則対象にはなりません。
しかし、今回の改正は違反すると罰則の対象になります。
知らないで自転車を運転して違反をすると罰金の対象となる可能性もあるので、自転車での違反や事故を減らすためにも、今回は自転車のルール改正について把握しておきましょう。
まず最初にクイズです。『自転車』の仲間はどっちでしょうか?
A:歩行者
B:クルマやバイク
正解はBです。自転車はクルマとバイクと同じ扱いとなるため道路交通法では「軽車両」と位置づけられています。
自転車は5歳ぐらいから乗り始めて小学校から高校までは主な移動手段として子どもが多く利用するため『歩行者と同じ扱い』と勘違いされる方もいますが『軽車両』です。
軽車両(自転車)を運転することは、クルマとバイクと同じ様に大きな責任と危険が伴う事を理解して、認識をアップデートする必要があります。
その上で、自転車に乗る人はもちろん。歩行者などが死亡・ケガをしない様に、交通ルールを遵守する必要があります。
今回改正される道路交通法で、特に影響があるのが以下3つの変更点です。
①自転車運転中に携帯電話(スマートフォン等)を使用する『ながら運転』の罰則が強化
②飲酒して自転車を運転する『自転車の酒気帯び運転』が新たに罰則に追加
③自転車の交通違反に対しては『青切符(反則金を納付)による取締り』の導入を規定
※警視庁の発表資料や他の改正部分は以下を参照
道路交通法の一部を改正する法律(令和6年法律第34号)概要 | 警視庁
この①と②に関しては2024年11月1日から施行され、③に関しては2026年5月23日までに施行されます。
目的はもちろん自転車の交通事故防止です。『ながら運転』に起因する交通事故は増加傾向にあり、『自転車の酒気帯び運転』したときの死亡重傷事故率が高い事から、今回の法律改正がありました。
では、それぞれ内容を具体的に見ていきましょう。
自転車を運転しながらスマホを見る、操作する、通話する。これらの『ながら運転』『ながらスマホ』を禁止し罰則が強化されました。
いままでも、各自治体の規制によって比較的に軽めな罰則(5万円以下の罰金)が設けられておりましたが、2024年11月1日から道路交通法が改正されて全国統一で罰則が適用され厳罰化されます。
具体的な禁止事項は以下の通りです。
・自転車運転中にスマホ等で通話すること
⇒但し、ハンズフリー装置を併用する場合は除く
⇒但し、イヤホンをしながらの自転車運転は罰則対象
・自転車運転中にスマホ等の操作または画面を注視すること。
⇒自転車に取付けたスマホを操作や注視するのもNG
⇒停車中の操作や注視は対象外
また、違反した際の罰則内容は以下の通りです。
・自転車運転中に「ながらスマホ」をした場合
⇒6か月以下の懲役又は10万円以下の罰金
・自転車運転中の「ながらスマホ」により交通事故を起こすなど交通の危険を生じさせた場合
⇒1年以下の懲役又は30万円以下の罰金
検挙の対象は14歳以上となるため、中学生や高校生も注意が必要です。
なお、ハンズフリー装置を利用すれば通話は対象外となっておりますが、イヤホンを装着したままの自転車運転は罰則の対象になり得るので注意が必要です。
2024年10月時点で、全国で適用される道路交通法に自転車を運転中のイヤホン利用を直接的に禁止する規定はありませんが、安全運転義務違反として判断される可能性があります。
また、多くの自治体では条例で規制の対象となっています。(例えば東京都では東京都道路交通規制 第8条で禁止されており、違反者には5万円以下の罰金が科せられる)
判断が難しいのは、片耳や開放型イヤホン、骨伝導イヤホンでも規制対象となるのか?ですが、この点は違反となる可能性もある事や、事故の際に過失割合に影響するので、イヤホンは控えるのが得策です。
そうなると、自転車運転中にハンズフリー通話をしたい場合は、スマホから直接スピーカーで通話をする事になります。(現実的ではないですが・・・)
道路交通法(第65条第1項)では「何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない」として、たとえ自転車であっても「飲酒運転」を禁止しています。
しかし、自転車の飲酒運転が処罰対象となるケースは「酒酔い運転」のみでした。これが、2024年11月1日からは「酒気帯び運転」についても罰則に追加され処罰対象となりました。
つまり、自転車でも「飲んだら乗るな」を徹底する必要があります。
また、自動車と同じく自転車でも、自転車を運転する人に酒類を提供や飲酒を勧める行為や、酒を飲んでる人に自転車を提供する行為も、酒気帯び運転のほう助となり違反です。
も禁止です。
違反した際の罰則内容は以下の通りです。
・酒気帯び運転
⇒3年以下の懲役又は50万円以下の罰金
・自転車の飲酒運転をするおそれがある者に自転車を提供し、その者が自転車の酒気帯び運転をした場合
⇒自転車の提供者に3年以下の懲役又は50万円以下の罰金
・自転車の飲酒運転をするおそれがある者に酒類を提供し、その者が自転車の酒気帯び運転をした場合
⇒酒類の提供者に2年以下の懲役又は30万円以下の罰金
・自転車の運転者が酒気を帯びていることを知りながら、自転車で自分を送るよう依頼して同乗し、自転車の運転者が酒気帯び運転をした場合
⇒同乗者に2年以下の懲役又は30万円以下の罰金
なお、「酒酔い運転」については、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金が現在も規定されており、変更などはありません。
現在、警察が自転車の違反行為を取締る際は、軽微な違反に注意を促す罰則を伴わない「自転車指導警告カード(黄色カード)」か、刑事処分の対象となる交通切符「赤切符」のどちらかが交付対象とされておりました。
※自転車指導警告カードは地域によって違いがあり場所によっては緑色や赤色の場合があります。
それが、2026年5月23日までに「青切符」による反則金制度が新設され、近いうちに自転車も青切符の反則金制度の対象となります。
「青切符」での取締りが適用されるのは16歳以上で、対象となるのは113の違反行為です。
施行されるのは2年以内ですが、いきなり「青切符」となると市民から反発が大きくなる事が予想されるため、2024年11月から重大な事故につながる可能性のある以下の違反行為に対しては、重点的に取り締まることが予定されているそうです。
※上記は一例です。また、もちろん「ながら運転」と「酒気帯び運転」も含まれます。
また、青切符が対象になったからと言って、赤切符が無くなるわけではありません。事故に繋がるような危険な運転をした場合は、今までどおり「赤切符」が交付され、刑事罰の対象となります。
傘をさしながらの運転は現在も違反となります。傘をさす、物を持つなどの行為で視野を妨げたり、安定を失う様な方法で自転車を運転してはいけません。
具体的には道路交通法第71条にて『地域に合ったルールを各都道府県が独自を制定することを委任』していて、東京都では東京都道路交通規則第8条により『傘を差し、物を担ぎ、物を持つ等視野を妨げ、または安定を失うおそれのある方法で、大型自動二輪車、普通自動二輪車、原動機付自転車または自転車を運転しないこと』と明記されております。
よって、違反した場合は5万円以下の罰金になってしまいます。
傘さし運転の取締りは、そこまで厳しくない状況ですが、今回の法改正を踏まえて、一時的に取締りが強化されることや、将来的には「ながら運転」と同じく道路交通法が改正され全国統一の罰則になる可能性もあります。
また、最近では100円ショップなどで、自転車に傘を固定する器具(傘ホルダー)についても、同様に傘さし運転とみなされる可能性が高いのでご注意ください。
雨の日は雨具(カッパなど)の利用や、自転車を諦めて徒歩の移動をオススメします。
自転車の事故と聞くと被害者(自分がケガをした)のパターンを想像しますが、もちろん加害者(相手をケガさせた、財物に損害を与えた)になるケースもあります。
自転車で加害者側になっても大きな事故や大事にならない。と思われている方は認識を改める必要があります。
自転車も軽車両となるため、事故を起こすと刑事上の責任が問われる可能性があります。また、相手がケガした場合や財物に損害を与えた場合は、民事上の損害賠償請求も発生します。
以下は自転車を運転している際に発生した加害事故の例で、死亡や重大な障害が残ったケースです。
【一般社団法人日本損害保険協会から引用。引用元:自転車事故と保険】
判決認容額(※) | 事故の概要 |
---|---|
9,521万円 | 男子小学生(11歳)が夜間、帰宅途中に自転車で走行中、歩道と車道の区別のない道路において歩行中の女性(62歳)と正面衝突。女性は頭蓋骨骨折等の傷害を負い、意識が戻らない状態となった。( 神戸地方裁判所、平成25(2013)年7月4日判決) |
9,330万円 | 男子高校生が夜間、イヤホンで音楽を聞きながら無灯火で自転車を運転中に、パトカーの追跡を受けて逃走し、職務質問中の警察官(25歳)と衝突。警察官は、頭蓋骨骨折等で約2か月後に死亡した。(高松高等裁判所、令和2(2020)年7月22日判決) |
9,266万円 | 男子高校生が昼間、自転車横断帯のかなり手前の歩道から車道を斜めに横断し、対向車線を自転車で直進してきた男性会社員(24歳)と衝突。男性会社員に重大な障害(言語機能の喪失等)が残った。(東京地方裁判所、平成20(2008)年6月5日判決) |
6,779万円 | 男性が夕方、ペットボトルを片手に下り坂をスピードを落とさず走行し交差点に進入、横断歩道を横断中の女性(38歳)と衝突。女性は脳挫傷等で3日後に死亡した。(東京地方裁判所、平成15(2003)年9月30日判決) |
5,438万円 | 男性が昼間、信号表示を無視して高速度で交差点に進入、青信号で横断歩道を横断中の女性(55歳)と衝突。女性は頭蓋内損傷等で11日後に死亡した。(東京地方裁判所、平成19(2007)年4月11日判決) |
(※)判決認容額とは、上記裁判における判決文で加害者が支払いを命じられた金額です(金額は概算額)。上記裁判後の上訴等により、加害者が実際に支払う金額とは異なる可能性があります。
上記の様なケースでは賠償金が数千万円となり、自転車の運転者(加害者)が未成年でも責任が問われます。
そこで検討したいのが、自転車事故による重大リスク(自転車事故による損害賠償責任)をカバーする保険が「個人賠償責任保険」です。
そんな保険に入ってない!と言う方もご安心ください。一般的には自動車保険、火災保険などに特約としてセットで加入して事が多いです。
しかし、保険会社や商品によって特約名が違うことや、保険会社によっては取扱いをしていない場合がありますので、改めて加入内容をご確認ください。
もし、個人賠償保険に未加入の場合や『とにかく自分や家族全員の自転車事故に備えたい』と言う方は、ネットやスマホで簡単に加入が出来る商品もあります。
以下のリンクから加入をご検討ください。
自転車保険ネット契約
https://safety-i.com/bicycle-ins/
今回の改正をきっかけに、警察は啓発活動も含めて重点的に取り締まることが想定されます。交通ルールや違反内容などをしっかり理解して安全運転を心がけましょう。
また、事業者(企業)の方で、通勤や勤務中の移動で自転車を利用している場合、従業員の皆さんへや教育が必要です。
もし、業務中に違反して取り締まりにあったら、業務が停滞してしまい従業員は反則金の支払いが出てしまいます。
忘年会などで、会社がお酒を勧めた上で、自転車を運転して取り締りにあったとしたら、事業者側にも責任が問われます。
事業活動に少なからずとも影響するのでご留意ください。
自転車のルールが厳しくなりますが、全ては悲惨な交通事故を無くすためです。大人が交通ルールを守り、子どもの見本となる様にしましょう。
【参考サイト】
2024年11月自転車の「ながらスマホ」が罰則強化!「酒気帯び運転」は新たに罰則対象に! | 政府広報オンライン
令和6年11月1日 道交法改正 自転車の罰則強化|葛飾区公式サイト
知っていますか? 自転車の事故~安全な乗り方と事故への備え~(PDF)| 一般社団法人日本損害保険協会