最近は働き方が多様になり、サラリーマンが副業をしたり、個人事業主として独立したり、または法人設立(起業)する方も増えて来ております。
そんな中で弊社に相談が多いのが「自動車保険」の相談です。今回は自動車保険を個人から法人に変更する際のご質問についてご説明させて頂きます。
この件については担当税理士や所管の税務署に詳細はご確認ください。ここでは簡単に概要だけご説明させて頂きます。
まず経費計上ですが、法人はもちろん個人事業主でも可能です。大前提として仕事で車を利用している人が対象となりますが、自動車保険料(他にも車検料金、自動車税、駐車場代など)は、必要経費として損金処理が可能です。
但し、仕事(業務)だけではなく私用(生活)でも利用する車は、全額経費計上が出来ません。その際は業務と生活で利用している比率から必要経費の金額を算出します。
これを「家事按分(かじあんぶん)」と呼びます。
自動車に関する経費だけではなく、自宅兼事務所の家賃や光熱費、仕事と私用兼用の携帯電話料金なども同様の考え方で、業務で利用する必要経費と生活で利用する家事費が混在した支出(家事関連費)の取り扱いとなります。
家事関連費を必要経費として計上する場合、以下のように定められております。
・業務遂行において必要な支出であること。
・上記を客観的かつ合理的に区分が出来ること
出典:e-Gov法令検索「所得税法施行令(家事関連費)第九十六条」
出典:国税庁「〔家事関連費(第1号関係)〕」
例えば、法人の社長や従業員が利用している社有車も、プライベートで利用している場合は注意が必要です。家事按分の割合については客観性を重視して税理士に確認するのが最善です。
なお、自動車保険料の経費計上について「領収書を発行してください」とご依頼を頂く事がありますが、領収書ではなく、以下でも支払証明(経費計上)は可能です。
まったく問題ありません。可能です。
まず、自動車保険の契約において切り替えとは具体的に何を切り替えるのか?を整理する必要があります。そこで、自動車契約において出てくる「〇〇者」の用語について簡単にご説明します。
契約者 | 保険料の支払いをする人 |
記名被保険者 | 対象となる自動車を主に運転する人 |
車両所有者 | 対象となる自動車の所有者(車検書に記載あり) |
※車検証の名義には「使用者」と「所有者」があります。ローンで購入した場合は、使用者は車を購入した人になりますが、所有者は信販会社(またはディーラー)になります。
一般的に「車の名義」とは「車両所有者」を指します。上記「○○者」は全て同じ人であるパターンが殆どですが、全てバラバラになる場合もあります。
例えば個人事業主が法人成りした際は、契約者名・記名被保険者・車両所有者の全てを法人に切り替えた方がシンプルです。(車両所有者を個人にしたまま、法人成りした会社に貸出す方法もあります)
但し、次で説明していますが、保険契約の等級を引継ぎたい場合は注意が必要です。「記名被保険者」名を個人事業主本人のままにする場合があります。
結論から申し上げると、以下の条件を満たせば個人事業主から法人に等級の引継ぎが可能です。
個人事業主がその事業を法人化する場合、または法人が解散して個人事業主になる場合に、一定の条件を満たせば、変更前と変更後の保険契約者・記名被保険者を同一とみなして、契約者別の「割引・割増」を継承することが出来ます。
但し、規程上は可能でも、その手続には沢山の確認資料が伴いますので、お客様のご理解とご協力が不可欠です。
※等級とは…自動車保険の等級は、前契約の事故の有無や使用回数などに応じて、1等級から20等級で設定されます。等級が上がると数字が大きくなって割引率が高く(保険料が安く)なり、等級が下がると数字が小さくなって割引率が低く(保険料が高く)なる仕組みです。
※等級継承とは…自動車保険の等級を引き継ぐ事です。例えば、A保険会社からB保険会社へ、親から子へ、個人から法人へ、など。一定の条件を満たせば引き継ぐ事ができます。
新たに設立された法人である事が条件です。
例えば会社を買い取った場合や知り合いの会社に参入する場合などは、既存法人となるため対象外となります。なお、等級を引き継げるのは個人事業主の時から利用していた車のみです。法人化に伴い新たに車を購入した場合は対象外です。
事業内容が異なれば自動車の使用目的や走行距離が異なるため同時にリスクも大きく変わります。そのため、個人事業主から法人成りする際に、事業内容がまったく異なる場合は対象外となります。
法人登記した際に名義変更(等級引継ぎ)をするのが条件です。
(保険会社によって法人登記後1年以内の場合であれば、等級の引継ぎが可能な場合もあります)
なお、引き継ぎができるのは元の記名被保険者が個人事業主本人の場合に限ります。
ご家族の方や従業員が記名被保険者になっている場合は、法人化する際に等級引き継ぎができませんのでご注意ください。
※時々免許の関係などで個人事業主でも奥様を記名被保険者にしているケースがあります。法人化する際は、前もって自動車保険の記名被保険者をご本人に直しておくことが必要です。後からの訂正はできませんのでご注意ください。
用意すべき書類の詳細は、ご契約の保険会社または代理店にお問合せ下さい。
車を販売店などで購入した場合は店側が名義変更も対応してくれますが、個人から法人への切り替えする際は基本的に自身で対応する必要があります(行政書士等への代行依頼も可)。
なお、名義変更手続きは車の所有者が実質的に変更になった日から15日以内に行うことが義務付けられております。(道路運送車両法13条1項)
よって事前準備をしっかり行い、余裕をもったスケジュールで対応する事が求められます。
必要な書類や申請方法などは、所管の陸運局(運輸局)にご確認ください。
関東運輸局 > 自動車検査・登録 > 自動車登録について > 名義変更
https://wwwtb.mlit.go.jp/kanto/jidou_gian/touroku/motor_regist_meigi.htm
また、同時に自賠責保険の名義変更も対応するのが望ましいです。
自賠責保険は車自体に掛けられている保険のため車検が切れていなければ名義が異なっても補償はされます。しかし「自賠責保険の契約更新のお知らせが届かない」「万が一の際に保険金の支払いが円滑に行われない」などのデメリットがあります。
自賠責保険の名義変更に手数料は掛かりません。自賠責証明書に記載されている契約保険会社名を確認して、各保険会社の以下リンク先のとおり手続きが可能です。
※弊社では「自賠責保険のみ」のお取り扱いについて中止させて頂いております。合わせて自賠責保険の名義変更についても、弊社ではお取り扱いが出来ません。何卒ご了承下さい。
損保ジャパン
https://faq.sompo-japan.jp/jibaiseki/faq_detail.html?id=30508
東京海上日動
https://www.tokiomarine-nichido.co.jp/support/solution/jibaiseki/transfer.html
三井住友海上
https://www.ms-ins.com/contractor/procedure/jibaiseki/contract/confirm02.html#anc-01
あいおいニッセイ同和
https://www.aioinissaydowa.co.jp/contact/agreement/alp_change.html
日新火災
https://faq.nisshinfire.co.jp/faq/show/17055?category_id=1627&site_domain=customer
個人契約から法人契約に切り替える場合は、現在の個人契約を解約し、等級継承した後、法人契約をスタートさせます。継承契約とは言え、まったく別物ですので、約款や保険料が変わりますのでご注意下さい。
また、適用される保険種目や補償内容、そして特約の範囲も変わります。
例えば、個人契約で、「日常生活賠償保険特約」などをご利用されていた場合には、その特約を継続利用することはできなくなります。(個人の日常生活の賠償事故を補償する特約なので法人は適用外になります)
一般論で申し上げると、自動車保険の内容は、個人契約のほうが、法人契約より手厚くなっていますので、変更の際に『保険料』『補償範囲』『特約の内容』は事前に確認するのがオススメです。