2024年10月に火災保険の改定があります。中でもマンションの管理組合で加入する火災保険は大きく値上がりしています。
弊社はマンション管理組合の火災保険について数多くのご契約をお預かりしておりますが、弊社のご契約様はもちろん。火災保険の見直しを検討している管理組合からの引き合いも頂いております。
今回は少しニッチな話となりますが、マンション管理組合の火災保険についてご案内させて頂きます。
マンションは、専有部分と共用部分の2つに大きく分類されます。
専用部分は、マンションの各住戸の部屋、つまり区分所有者(各住戸のオーナー)が個別に所有する部分です。例えば、リビングルームや寝室、キッチンなどが該当します。専用部分の火災保険は、基本的にその住戸のオーナーが個別に加入する必要があります。火災や水漏れなどがあった場合に、その住戸の修理費用をカバーするための保険です。
共用部分は、全住民が共同で利用するエリアや設備のことです。例えば、エントランスや廊下、エレベーター、外壁、屋根などが該当します。共用部分に関しては、マンション全体で管理組合が火災保険に加入します。この保険は、共用部分に発生した損害をカバーします。
管理組合が火災保険に加入する際には、管理会社を通して火災保険に加入するケースが多いです。そういった場合、管理会社の提示した選択肢から選ぶことになりますが、管理会社は建物管理の専門家であり保険の専門家ではありません。
そのため、担当者が保険に詳しくない場合、実際に必要な補償とマッチしていないケースもあるので注意が必要です。
火災保険はここ数年で大きく値上がりしており、今年10月にまた火災保険の料率改定による実質的な値上げがありますが、特にマンション管理組合の火災保険はここ数年での値上がり幅がかなり大きくなっています。
原因は全国的なマンションの老朽化による漏水事故の多発が大きな要因です。
昔のマンションでは給排水管では銅管などの利用が主流でしたが、耐用年数が20年~30年程度と言われており、それを超えると漏水が発生しやすくなったり、水に錆が混じったりというトラブルが発生しやすくなります。
一方でマンション全体の配管工事を行うと、大きな金額がかかります。そのため住民間で意見がまとまらず、工事ができずに耐用年数を超えた状態になっていることも少なくないのが実情です。
火災保険の補償については、一般の住宅と同じ内容で補償されます。火災の他に風災や水災、水濡れ、破損等が対象となります。
特に破損については、マンション特有の事情として、エントランス等で何者かのいたずらによる破損事故が発生するケースがあります。ガラスやオートロック設備が被害を受けると高額になるケースもあるので、補償内容についてはしっかりと確認をしましょう。
他にもマンション管理組合が把握しておきたい火災保険の補償は以下の通りです。
入居者の方全員の日常生活や居住用戸室の管理不備で発生した事故でのケガや物損に対する賠償補償です。
◆主な事故例◆ 区分所有部の配管から漏水が発生して、階下の天井や家財が水濡れ損害を受けた。
マンション共用部分の所有使用管理に起因するケガや物損に対する賠償補償です。
◆主な事故例◆階段の昇降中に手すりが壊れてケガをした。建物共用部の配管から漏水が発生して、戸室の壁等が水濡れ損害を受けた。
管理組合の役員が管理規約の業務に起因して賠償責任が発生した場合の補償です。
◆主な事故例◆役員業務の際に誤って住民の個人情報を流出させてしまった
マンションの事故で非常に多いのは給排水設備からの漏水損害です。そのため、漏水に関わる下記の4つの補償は必ず付帯することをおすすめします。
補償金額の設定時に建物評価金額を全額補償するのでは無く、評価金額の何割かで補償金額を設定することが可能です。
例えば建物の評価額が5億円の場合、補償金額を5億円にすることもできますし、3億円にすることもできます。
マンションは基本的に鉄筋コンクリート等の頑丈で火災に強い構造になっており、火災が起きても1棟が全焼するリスクはかなり低いです。
そのため、評価額の何割かで補償金額を設定しても特段問題ないです。
個人賠償包括の金額は1000万円~1億円で設定できますが、1000万円~3000万円程度が補償されていれば問題ないです。
管理組合の保険で個人賠償包括が必要となるのは、主に漏水事故が発生した際にその方が個人賠償保険に加入していないと大変な為です。
そうした漏水事故などの家周りのリスクでは、ほとんど物損事故となりますが、高額になっても数百万円程度です。
自己負担額を設定することで保険料を下げることができます。
免責金額を設定する場合、個人賠償包括についてはなるべく免責金額を設けない事をおすすめします。個人賠償包括は入居者が支払う金額についての補償ですので、免責金額を設定するとその入居者の方から免責金額分を回収する必要が生じます。
万が一そこでトラブルに発展すると、管理組合に大きな負担となりますので、個人賠償包括への免責付帯は要注意です。
マンション管理組合の火災保険は事故件数によって保険料が変わります。
一定期間内※に保険金支払いが何件あったかで、次回更新時の保険料に影響が出ます。そのため、少額の保険請求をしていると、却って損になってしまうケースもあります。
そのため、下記の点に注意が必要です。
保険を検討する際は複数の会社や商品と比較検討するのが基本です。保険は保険料だけではなく内容も改定されいているので、改定や満期のタイミングで見直す事が大切です。
弊社は乗り合い代理店なので、複数の商品から比較検討が可能です。
マンション管理組合の火災保険については、日新火災のマンションドクターという商品が他社と比べてかなり特徴的なものになっています。
このマンションドクターの特徴は、マンションごとに点数をつけて、その点数から保険料が決まることです。そして、この点数はマンション管理士が診断したレポートを元につけられます。
この保険の見積を取る場合は、「マンション管理適正化診断サービス」を受ける必要があります。一般社団法人日本マンション管理士会連合会が実施しているサービスで、無料で受けることができます。
「マンション管理適正化診断サービス」のご紹介 – 日本マンション管理士会連合会 (nikkanren.org)
点数が高いと他社と比べて大幅に安くなるので、メンテナンスをしっかり行っているマンションではメリットが大きい内容になっています。
ただし注意点として、このサービスを受けないと見積が作成できないため、事前に動いておく必要があります。
無料ということもあり、診断サービスのお問い合わせは多くあるようで、診断までに1,2ヶ月かかることもあります。管理組合で検討する時間も含め、更新の半年前くらいには診断のスケジュールを抑えておく事が重要です。
弊社では数十棟のマンション管理組合の火災保険契約をお預かりしております。経験に基づいて火災保険の相談や見直し等も行っておりますので、ご興味ある方はお気軽にお問い合わせください。