皆様こんにちは!営業の福永です! 4月から「パワハラ防止措置の義務化」が中小企業においても義務化されることを、先日のブログでもご紹介させていただきました。
【2022年4月中小企業も義務化へ】パワーハラスメント防止処置の対策してますか?
https://safety-i.com/blog/insurance/pawahara-boushihou/
ご紹介したハラスメント対策は出来ていますか?今回はハラスメントと同様に経営側が注意したい『長時間労働』についてお話します。
そもそも長時間労働とはどのくらいの労働時間のことを指すのか、皆さんはご存知ですか?
法律上では「○時間以上が長時間労働」という明確な基準はありません。ただし、労働基準法が「基本の労働時間の上限」を定めています。労働基準法第32条では、勤務時間は1日8時間以内かつ1週間に40時間以内と定められています。
しかし、例えば期末や月末はこの時間を守ることが厳しい、という企業も多いかと思います。そうした労働基準法で定められた時間を超えての労働時間については、※36協定を締結し、労働基準監督署に届けをする必要があります。
※36協定とは?
労働基準法第36条に定められた「時間外・休日労働に関する協定届」のことを指します。会社は法定労働時間の「1日8時間」「週40時間」を超える、時間外労働及び休日勤務を命じるためには、労働者と書面による協定を締結して、労働基準監督署に届け出ることが義務付けられています。
ちなみに、現時点でどれくらいの方が長時間労働に該当しているかご存知でしょうか?
厚生省の調査によりますと、週49時間以上働いている日本人は18.3%とのことです。男女別でみると、男性で49時間以上働いている人の割合は26.3%です。
その一方で日本以外の海外の国で週49時間以上働いている人の割合は、以下の通りとなっております。先進国の中でも日本の労働時間が多いことが統計上でも明らかです。
参考:厚生労働省の令和2年版 過労死等防止対策白書
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/karoushi/20/dl/20-1-1.pdf
長時間労働が全て『悪』ではありません。突発的なお客様対応や繁忙期は一時的に長時間労働になってしまう場合もあるかと存じます。しかし、長期間労働が慢性化すると経営に様々な『悪影響』が出てきてしまいます。
長時間労働が前提になると、無意識に残業前提で仕事の予定を組み立てるため結果として生産性や業務効率は低下します。 また、慢性的な長時間労働により従業員が疲弊すると集中力や仕事のパフォーマンスも低下し、その穴埋めをするために長時間労働をする悪循環が生まれてしまいます。
長時間労働は「残業代」「社会保険料」「光熱費」のコストが増加します。そして、見えづらいコストとして「採用・教育」があります。これは、慢性的な長時間労働により従業員が退職し定着しない場合、改めて採用や教育を行うコストです。このコストは金銭面だけではなく、採用に労力や時間も掛かるため注意が必要です。また、働き方改革や若者の意識変化により、長時間労働をしている会社は若い人材が集まらないデメリットもあります。
そして一番悪影響が顕著に出るのが従業員です。1日は24時間しかありません。仕事が長時間に及ぶと、従業員は睡眠時間やリフレッシュの時間を削る様になります。これが慢性的になると身体(フィジカル)や精神(メンタル)が消耗され健康を害してしまいます。
最悪の場合はうつ病、過労死など深刻な状況に発展し、退職や休職に繋がると経営に大きなダメージとなります。
お気づきのとおり、この悪影響は相互に作用し負のスパイラルとなります。これを止めるためにも長時間労働を是正し従業員を大切にする必要があります。
従業員は最大の財産であり守るべき資産です。「企業は人なり」の言葉通り従業員が心身共に健康で働きやすい会社を経営する事が、結果として成長戦略の近道となります。
では、なぜ長時間労働が多くなってしまうのでしょうか?
この様な「残業の原因」を探るときに他責になる分析を多く見かけますが注意が必要です。
会社が悪い、上司が悪い、部下が悪い等、原因を外に向けて考えてしまいがちですが、これではカイゼンの本質には繋がりません。ここは冷静になって各々の立場から残業の原因を探ってみましょう。
・受注量(仕事量)が多い、慢性的な人手不足。
・長時間労働を良しとしている企業風土や評価制度。
・権限委譲が出来ていない弊害(承認プロセスや会議が過剰)
・管理職としてのマネジメント能力不足。
・残業代が関係ないため削減への意識が低い。
・上司が残業する事で「付き合い残業」が横行。
・仕事内容によって量、質、速さの調整が出来ない。
・自発的な自己研鑽や学習を怠った能力不足。
・残業を前提としたタイムスケジュール。
それぞれの細かい説明は割愛しますが、各々の立場で残業となる原因が内在しております。どれか1つ解決しても根本は解決しません。
全体最適化に向けて解決が比較的容易な箇所からカイゼンに着手し、各々の立場を尊重し理解しながら残業削減に取り組む事が必要です。
長時間労働に起因して企業や経営側(使用者)が訴えられるケースも少なくありません。どの様なパターンがあるのでしょうか。
一部の例を列挙しましたが、これらはすべて使用者責任が問われます。
経営者は「上司部下の間で起こった事で知らなかった」では済まされません。従業員の不法行為により生じた第三者(同じ職場の社員同士も含む)に対する損害について使用者責任を負うことになります。
この様なケースで社員本人や家族から訴訟を起こされて損害賠償請求を受けると影響は甚大です。例えば3のケースで記憶に新しいのは、平成12年の電通事件ではないでしょうか?
新卒で採用されたAさんが慢性的な長時間労働を強いられ鬱病にかかってしまい、自殺に至ったことで遺族である両親が企業側に損害賠償を請求した事例です。裁判では、最終的に企業側が遺族に対し慰謝料1億6,800万円を支払うことで和解が成立した。
この事件は企業側が安全配慮義務を怠ったことが原因で起きた事件です。
安全配慮義務とは、労働契約法の第5条より「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」と明文化されている企業が負う義務のことです。
実際に安全配慮義務違反となるかどうかは、次の2点から判断されます。
安全配慮義務違反自体には罰則はありません。
しかし一度事故が起きた場合には、会社は極めて不利な立場になります。前述の通り、本人や遺族が会社を訴えることも一般的になりました。その際に問われるのが安全配慮義務をどこまで徹底していたかです。
この様な悲しい事件事故を起こさないためにも、安全配慮義務を徹底し慢性的な長時間労働をカイゼンする必要があります。
長時間労働の対策としては、DX(デジタルトランスフォーメーション)に本気で取組みを行い、業務プロセスを見直す。
その上で、クラウドサービス利用(Microsoft365、GoogleWorkspace、サイボウズ、kintone)やRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の導入を検討するのがオススメです。
また、ツールやサービス導入よりも大事なのは、従業員とのコミュニケーションです。
1on1などの面談を通して従業員の体調の把握や、精神面などメンタルヘルスケアを行う。
定期的な声がけを行い従業員との摩擦を減らしてしていく等の取組みより、社員とコミュニケーションロスを減らして、働きやすい環境を整備するのが無用なトラブル削減に繋がります。
この様な取組みを行っていても、万が一が発生してしまう可能性はあります。
そこでお役に立てるのが「保険」です。労働災害の保険は労働者(アルバイトやパートを含む)を一人でも雇っている場合に加入が義務付けられている政府の労働災害保険(政府労災)があります。
しかし、政府労災は被災者を救済する最低限の補償のみで、慰謝料やお見舞金などは含まれません。また、労災認定から給付までに一定の時間が掛かってしまいます。
そうなると、訴訟で会社が負ければ損害賠償金(死亡事故ともなれば1億円を超える判決も多く、例えばうつ病になったという事例でも数百万円規模になる場合も)の支払いを迅速に支払う事は出来るでしょうか?
この様なリスクを減らすためにあるのが、労災上乗せ保険と言われる「業務災害補償保険」です。
業務災害補償保険とは、役員や従業員が業務に起因して発生した怪我や病気で、事業者が支出する費用等を補償する保険です。
この保険であれば前述したケースについても、政府労災でカバーしきれない部分を補償する事が出来ます。但し注意が必要なのは商品のプランや特約によってカバーされる補償が違うという点です。
<前述したケース>
<対応する特約>
1 は、従業員から事前に予定を聞いていたにも関わらず業務上不必要な残業を無理強いするのはパワーハラスメントにあたります。よって「雇用慣行賠償責任補償特約」となります。
2と 3 は、長時間労働に対する是正(安全配慮義務)を怠った結果、業務に従事している間に被った病気または怪我にあたるので、「使用者賠償責任補償特約」となります。
もう少し、雇用慣行賠償と使用者賠償の違いを説明すると以下のとおりです。
雇用トラブルにて、会社側が訴えられた際に備える保険です。
企業が従業員からセクハラやパワハラ、差別定行為、不当解雇などを理由に損害賠償責任を追求された場合の賠償金等に備える保険です。
近年では雇用形態が複雑化しており、正社員や派遣社員などの働く立場によって様々な問題が浮き彫りになっています。
従業員が業務中に心身の傷害を負った労災事故にて、会社側が訴えられた際に備える保険です。
仕事中のケガ、うつ病による自殺や過労死などの労災事故で、従業員の遺族(加入者に限ります)からの訴訟などにより、会員企業やその役員が法律上の賠償責任を負った場合の賠償金・弁護士費用などが支払われる保険です。
損保ジャパン – 事業活動総合保険『ビジネスマスター・プラス』
https://www.sompo-japan.co.jp/hinsurance/risk/employee/master_plus/
東京海上 – 超Tプロテクション
https://www.tokiomarine-nichido.co.jp/hojin/rosai/cho-t-protection/
三井住友 – ビジネスJネクスト
https://www.ms-ins.com/business/employee/j-next/
あいおいニッセイ – タフビズ業務災害補償保険
https://www.aioinissaydowa.co.jp/business/product/toughbiz/gyomu/
今回は慢性的な長時間労働に関する事業者側のリスクをご説明させて頂きました。
2019年4月より働き方改革関連法案の一部が施行され、「働き方改革」は、大企業だけでなく中小企業にとっても重要な経営課題となっております。
企業側も改めて働き方について振り返る大きな起点となっているのではないでしょうか?
まずは、企業側と従業員側の相互理解やコミュニケーションを深める意味でも、社員の皆様と「長時間労働の現状と削減について」を本音で語り合うのが良いかも知れません。
弊社セフティーでも道半ばですが慢性的な長時間労働について様々な対策を行っています。その中には失敗した施策もありますが、効果が出て定着している取組みもあります。
この様な弊社の経験やノウハウをお伝えする事が出来るので、お悩み等ある場合はお気軽にご相談下さい。
また、業務災害保険についてはプロの私達にお任せ下さい。今回ご紹介した使用者賠償や雇用慣行賠償だけではなく、事業全体を俯瞰して様々なリスクの抜け・漏れ・重複を可視化してお客様に最適な保険をご提案させて頂きます。
文章が長くなり少し残業してブログを書いてしまいました(笑)。今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
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