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苦情やトラブルから考える。火災保険の確かな安心とは?

2023.03.29 最終更新日:2023.03.29 保険情報

火災保険は、「発生原因の如何を問わず」払われる保険ではありません。今回は火災保険について「何を注意して」「どう対処するか」を、募集代理店の立場から考察します。

 

2022年8月北九州市小倉北区の担過市場で、飲食店や映画館など45店舗が被災して、焼損面積は約3300平方メートルに及びました。何と、この市場では四カ月前の2022年4月にも火災が発生しており、42店舗1924平方メートルを焼失しています。

 

旦過市場 大火災はなぜ繰り返された |福岡県北九州市 | NHK
8月10日、2度目の旦過市場火災。4月の火災を上回る45店舗が焼損。なぜ、大火災は繰り返されたのか、どうすれば次の火災を防ぐことができるのか、取材しました。
https://www.nhk.or.jp/kitakyushu/lreport/article/000/58/

 

何故、半年で、二回の火災が発生したのか?出火原因は?火元の職業は?保険金支払いはあったのか?延焼損害の賠償責任は?この様な火災事故も仕事柄、気になることは沢山あります。

 

近年の出火傾向と、火災保険の現状について

総務省が令和4年(2022年)10月に発表した、令和3年(2021年)1~12月の出火件数は35,222件でした。これは、1日あたり約96 件、15 分毎に1件の火災が発生したことになります。

出火の発生原因は以下のとおりです。

原因別件数構成比前年比增減率
たばこ3,0428.6%▲62-2.0%
たき火2,7647.8%▲60-2.1%
こんろ2,6787.6%▲114-4.1%
放火2,3336.6%▲164-6.6%
電気機器1,8165.2%20512.7%
火入れ1,6404.7%▲44-2.6%
放火の疑い1,5554.4%00.0%
電灯電話等の配線1,4734.2%755.4%
配線器具1,3543.8%14812.3%
ストーブ1,0913.1%151.4%
出典:令和3年(1~12月)における火災の状況(確定値)について(令和4年10月28日)

10年前の最大原因の「放火・放火疑い」は、平成21年11,205件をピークに減少しつつあります。社会情勢を反映する放火事件は減少していて、喜ばしい限りですが、ITやDXに伴い電気機器や配線器具が原因の火災も増えております。

皆様のご記憶に新しいと思いますが、2019年10月31日に、沖縄の首里城が全焼した原因は「配線器具(延長コードとLED照明器具で何らかの電気的異常があった)」と言われております。※最終的には原因不明で調査終了

首里城の建物や美術工芸品の損害額は約84億4千万円で、火災保険は、あいおいニッセイ同和が引き受けており、2021年5月合計70億円の保険金支払いを完了したと報道されています。

 

首里城火災の損害84億円 管理財団らに保険金支払い – 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE28E310Y1A520C2000000/

 

さて、上記では火災の出火原因を見ておりましたが、火災保険は「火事」だけが補償範囲ではありません。その他にも台風・落雷・風水害・大雪・洪水などの被害も補償されます。

近年では、想定を超える大規模な自然災害で、一兆円を超える支払いが続いてしまった事で、火災保険料は5年で3回の値上げをお願いするに至っています。(火災保険料の値上げに関する記事は以下のブログをご参照ください)

 

 

保険代理店から見た火災保険の心配事とは?

そんな事情から、最近の火災保険は、洪水等の自然災害の関心に偏っていますが、自然災害は防ぎようがない事象であり、保険代理店としてお客様からご相談を頂くのは通常の火災(失火、放火、類焼、延焼など)です。

万が一、火災事故が発生した場合、お客様やご家族の怪我や安全が一番の心配事となりますが、火災保険に関して最も心配する問題点は、「出火原因」「契約品質」「保険金支払い」の三点です。

 

 

<出火原因>
まず、火災が発生した際に一番最初に心配する事は「火災の発生原因」です。なぜなら、出火原因によっては保険金のお支払いができない例もあるからです。

出火原因はすぐに判明するのでは?と思うお客様もいるかと存じますが、実は火災が発生した際に、その火元ですら原因がつかめない場合もあります。(前述した首里城の火災も原因不明で捜査終了となっているのが良い例です)

例えば、就寝中の火事で着の身着のままに逃げ出したとしたら、家主も発生原因は掴めず、消防署と警察の調査に委ねる以外ありません。

この「出火原因」は火災保険を利用する上で起点となるのでとても重要です。

 

<契約内容(契約品膣)>
契約の間違いがあると、是正するまでの期間、保険金支払いは保留されてしまいます。

「契約間違い?そんな事はあるの?」と思われる方も少なくないと存じますが、担当代理店の知識や経験不足、ヒューマンエラーによるものや、お客様の告知ミスや通知ミスなどが原因で発生しています。

だからこそ、ご契約時にしっかりとしたご説明や、定期的な契約内容の確認などで、契約品質に関心を持って頂くことが大切です。

 

<保険金支払い>
中でも、心配なのは、保険金支払いです。これは「出火原因によって保険金の支払いがされない場合」と「契約内容によって保険金の支払いが想定より低かった」の2つに分かれます。

例えば、発生件数が最も多い、「タバコが原因」の火災や、冬季に多い「ストーブ引火」の火災では、その行為や誘発原因が、「故意」または「重大な過失」と判断された場合は、保険金の支払いはされません。

これらは、消防署と警察の調書を、保険会社が確認して、最終結論を出します。お客様がこれを受け入れられない場合は、損保ADRや、裁判所に、不服申し立てをします。

また、契約内容によっては想定していた保険金を受取れない事例もあります。(例えば一部保険になっているとトラブルになりやすいです。詳細は後述します)

 

 

他に注意すべきことは、「失火法」は、故意や重過失の失火は、法的保護の適用外となりますので、延焼損害があると、賠償問題に発展するリスクもあります。

火災保険加入の際には、様々な諸問題を出来る限り把握して、確かな対応をしてくれる窓口を選択することが大切です。万一の場合、周囲に与える影響は大きく、解決の難易度を理解し、万一のお客様の立場をサポートしてくれる代理店をお奨めします。

 

 

火災保険に関する苦情の内容とは?

窓口や代理店を慎重に選んでも保険にクレーム(苦情)はつきものです。ではどんな苦情があるのでしょうか?

損害保険会社とトラブルが発生した際に、中立・公平な立場で対応するのが「そんぽADRセンター」です。
※一般社団法人日本損害保険協会が運営する機関。ADRは「Alternative Dispute Resolution」の略で、「裁判外紛争解決手続」と日本語では読みます。

そんな、そんぽADRセンターには様々な苦情が寄せられています。2022年第一四半期の苦情相談内容分析は以下のとおりです。

 

そんぽADRセンター統計号 2022年度第1四半期(PDF)
https://www.sonpo.or.jp/report/statistics/adr/ctuevu000000533l-att/adr_statistics_2022Q1.pdf

 

自動車保険と傷害新種・海上保険は、保険金支払いに関する不満が24%、次に保険会社担当者に関する苦情が23~17%となっております。

それに比較して、火災保険の苦情は、被害の認定16%、事実認定15%、保険金支払の不満13%となっており、明らかに自動車・傷害保険とは異なり、起点となる「事実認定」の苦情が多く、相談されたご契約者の苦悩が伝わってきます。

更に、下表の「紛争解決手続きの実施状況 – 受付件数の推移表」では、2021年度累計「自動車保険166件」に対し、「火災保険217件」と51件も上回り、2022年第一四半期でも、自然災害の発生がなかったにもかかわらず、自動車紛争を上回る件数となっているのです。

2021年度 2022年度
第1四半期 第2四半期 第3四半期 第4四半期 年度累計 第1四半期
自動車 42 (31.3) 42 (40.0) 46 (37.4) 36 (31.0) 166 (34.7) 50 (34.7)
火災 65 (48.5) 41 (39.0) 58 (47.2) 53 (45.7) 217 (45.4) 71 (49.3)
傷害 19 (14.2) 11 (10.5) 3 (2.4) 9 (7.8) 42 (8.8) 13 (9.0)
新種・海上 8 (6.0) 11 (10.5) 16 (13.0) 17 (14.7) 52 (10.9) 10 (6.9)
その他 0 (0.0) 0 (0.0) 0 (0.0) 1 (0.9) 1 (0.2) 0 (0.0)
合計 134 (100.0) 105 (100.0) 123 (100.0) 116 (100.0) 478 (100.0) 144 (100.0)

自動車保険と火災保険では、契約件数も事故件数も格段の差がありますが、それでも、火災保険件数が多いのが現実です。

 

 

火災保険の、最も多いトラブルの原因とは?

そんぽADRセンターに寄せられる火災保険の苦情は上記のとおりですが、実際に現場の保険代理店(弊社)が接するトラブルで一番多いのが「一部保険」です。

以前、鑑定人から、『火災トラブルの大半は、“一部保険”だ!代理店さんしっかりして下さいよ』 そんな嘆きを聴いたことがあります。

「一部保険」とは、保険対象物の価額(保険価額)よりも設定している保険金額が低く設定されている契約です。

特に実損払い方式(実際の損害額と同額の保険金が支払われる)契約ではなく、比例てん補方式(保険価額に対する保険金額の割合に応じて保険金が支払われる)契約だと注意が必要です。

仮に、評価額が1億円の機械設備一式に対して保険金額を5千万円かけていた場合、付保割合50%と判断されます。火災発生時等の損害に対して50%しか受け取ることが出来ません。

 

 

つまり、財物の価値に対して、保険契約が全部ではなく、一部しか加入されていなかったことを意味します。(最近はコンピューターで評価額を算出するので、チェック機能が働き改善されつつあります)

それでは上記の例で、鑑定損害の総額が、5千万円だったら、お支払保険金は、幾らなのでしょうか?

「損害額×付保率」となり、約2,500万円がお支払い目安になります(80%条項で3,125万円)。これが典型的な一部保険ですが、実際に火災が発生しないと、表面化しない問題でもあるのです。

一部保険を回避するには、評価額の80%以上の契約が条件ですが、お支払い保険料の節約で、あえて高額な補償(全部保険)を望まないお客様もあります。この場合は、特別なルールを適用して、お客様のご要望にお応え出来るように検討と試算をします。

保険は、お客様と保険会社の約束に基づく契約行為です。大切なことは、お客様のご希望と、保険約束
の両方が成り立つようにして、契約者と保険会社の信頼を構築することにあります。

 

 

安心の原点は、契約対象物の「評価」にあります!

火災保険は「物保険」、生命保険は「人保険」です。物の価値は、第三者が評価できますが、人の価値は、勝手に付けることは出来ません。従って、火災保険は、加入し過ぎると超過保険、金額が少ないと一部保険となり、人保険と、物保険の根本が異なります。

つまり、火災保険の契約は、加入財物の価値を間違わず、正しく設定することが、確かな保険を備える前提です。

住宅や家財は、標準化され簡単ですが、工場や倉庫や飲食店や病院・診療所の、建物や機械や設備や商品材料は、複雑で自動計算できません。

従って、お客様から、「固定資産台帳」をお預かりして、一点一点の金額を算出して評価します。

法定耐用年数を超えた財物の簿価は0円ですが、その財物が現役で稼働していれば、価値があるのは当然であり、正当な金額(鑑定人から批判されない金額)を算出します。

これは、罹災時の損害査定をする火災鑑定人と同じで、保険の入口(契約)と出口(罹災)の基準を合わせることがポイントです。

なお、事業用資産の価値基準では、①新価②時価③簿価がありますが、保険作業では、固定資産台帳の金額から、物価指数を乗じて①を求めます。②は①の値に経年減価額を引きます。

新価(しんか)同等のものを新たに建築あるいは購入するのに必要な金額【再調達価額】
時価(じか)新価から「経過年数による価値の減少と使用による消耗分」を差し引いた金額
簿価(ぼか)会計上の取得原価から減価償却費を差し引いた金額

万一、罹災損害を受けた場合には、同等の物品を取得する資金が必要になります。その金額を保険で補うのが、火災保険です。(不当利得排除で、再取得基準で加入できない対象物もあります) 

まずは、保険加入出来るお客様の再取得財産は(リース品除く)幾らになるのか?それに対して、何割の保険を備えるか?の順番が、正しい保険を選択する流れです。

 

 

火災鑑定人に評価を依頼するのも安心を手に入れる方法!

保険金額には根拠が有り、ザックリな金額は危険です。

罹災時に、万一、「契約ミス」が発見され、保険料の追徴や返戻が生じても、精算後に保険金は支払いされます。しかし、「失火原因」と「保険金額」の責任は、お客様に帰属しますので、くれぐれもご注意下さい。

従って、保険加入するかは別として、保険対象となるご自身の「全財物の価値」は、事前に知って置くべきです。生保を含め「付き合い保険」は、ムダ・ムリ・ムラの温床で、お客様の利益には繋がりません。

ご自身の財産について、無関心であってはならず、特に保険金額には、高い関心をお寄せ頂き、一部保険にならないようにご注意下さい。

残念ですが、お客様に「固定資産台帳」の提出を求めた際に、お叱りを受けることも少なくありません。まずはお客様にご理解して頂き、むしろ積極的に開示して、ご協力頂くことが、トラブル防止になり、お客様の利益に繋がります。

代理店が信用に足りないのであれば、「鑑定のプロ(火災鑑定人協会)に依頼する方法」もあります。

その方法は、火災後より、火災前による鑑定で、万全を備える為の安心の究極策です。(業界用語で【平場鑑定 – ひらばかんてい】と言いますが、火事の凸凹現場とは異なり、平らな場所で鑑定をすることから付いた呼称?らしいです。)

費用は少々お高いですが、最上の安心で有り、化学プラント工場、製造工場、神社仏閣の評価にはお勧めします。

万一の時の保険が、万一の時にお役に立たないほど、悲しいことは有りません。保険従事者として、皆様が安心する役立つ保険であって欲しいと願っています。

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